F1山田さん

詳しくないけどF1好き。キミ・ライコネン、角田裕毅を応援。そのほか雑記もいろいろ書いてるブログです。

思い出のF1マシン フェラーリ412T2

思い出のF1マシン、フェラーリ 412T2について、その技術的特徴、そしてジャン・アレジの初優勝モンツァでの悲劇的な全滅という二つの対照的なハイライトを深掘りしてご紹介します。

最後のV12!フェラーリ 412T2の技術的特徴

1995年シーズンを戦った412T2は、フェラーリF1マシンにとって一つの時代の終焉を告げる存在となりました。

最後のV12エンジン

412T2の最大の特長は、3リッター V型12気筒エンジンを搭載した、フェラーリF1史上最後のマシであることです。

  • サウンドの魔力: V12エンジンは、その多気筒ゆえの複雑で甲高い独特のサウンドで、多くのファンを魅了しました。この翌年からフェラーリはV10エンジンに移行するため、V12の咆哮を聞ける最後のマシンとなりました。
  • 開発のジレンマ: V12は高出力でしたが、構造上、V10と比較して内部抵抗が大きい重い、そして燃費が悪いという課題を抱えていました。1995年は排気量が3.5リッターから3.0リッターに縮小されたことで、燃費効率の優れるV10やV8に対するV12の優位性が薄れ、翌年のV10への転換を決定づける要因となりました。

スラントノーズ(ローノーズ)への回帰

412T2は、当時のトレンドだったハイノーズをやめ、古典的な**スラントノーズ(ローノーズ)**を採用しました。

  • ジョン・バーナードの判断: 設計者のジョン・バーナードは、新しい空力レギュレーションを考慮した結果、ローノーズの方がフロントのダウンフォース値が高く出ると判断し、このデザインを選択しました。このエレガントなフォルムは、多くのF1ファンにとって「美しいフェラーリのイメージを決定づけたとも言えます。

劇的なハイライト:アレジのキャリア唯一の勝利

412T2が刻んだ最も感動的な記憶は、天才肌のドライバー、ャン・アレジのF1キャリアにおける唯一の勝利です。

1995年 カナダGP

  • 奇跡の「27」: 優勝の舞台となったのは、モントリオールサーキット・ジル・ビルヌーブ。アレジが駆るマシンは、フェラーリの英雄ジル・ビルヌーブがかつて背負ったカーナンバー27でした。英雄の地で、アレジが27番のマシンで勝利を掴むという、運命的なドラマに世界中のティフォシが熱狂しました。
  • 誕生日プレゼント: レースが行われた1995年6月11日は、奇しくもアレジの31歳の誕生日でした。長年期待されながらもなかなか勝てなかったアレジにとって、これ以上ない最高の勝利となりました。
  • 薄氷のウイニングラン: レースはミハエル・シューマッハのリタイアでトップに躍り出たアレジが、そのままチェッカーを受けます。しかし、勝利の喜びも束の間、ウイニングランの途中でガス欠でマシンがストップ。この時、5位でフィニッシュしたシューマッハが、コース脇に立ち尽くすアレジを自身のマシンに乗せ、二人乗りでピットに戻るという、F1史に残る友情と感動のシーンが生まれました。

悲劇の舞台:モンツァでの「フェラーリ全滅」

アレジの歓喜から約3か月後、412T2はチームにとって最も苦い記憶を刻むことになります。

1995年 イタリアGP(モンツァ

  • 本拠地での期待: イタリア・モンツァでのグランプリは、フェラーリティフォシにとって一年で最も重要な「ホームレース」です。大観衆が見守る中、このレースで好調だったのはゲルハルト・ベルガーでした。
  • 不運の連続: レース序盤、ベルガーは快走していました。しかし、そのベルガー車に、チームメイトのアレジ車から脱落した車載カメが飛び込み、サスペンションに直撃するという前代未聞の不運なアクシデントが発生。ベルガーはリタイアを余儀なくされます。
  • 絶望のダブルリタイア: ベルガーのリタイアでアレジが単独首位に立ち、モンツァでの勝利の期待は彼に託されました。しかし、レース終盤、アレジ車にもホイールベアリングのトラブルが発生し、無情にもストップ。フェラーリの2台がまさかのダブルリタイアという最悪の結果で終わってしまいました。
  • ティフォシの反応: 目の前で本拠地のフェラーリが全滅するという悲劇はティフォシ激しく落胆させましたが、不運が重なったことに対する嘆きや、アレジへの同情の声が大きかったと言われています。

412T2は、最後のV12というサウンド、美しいデザイン、そしてアレジの感動的な初優勝とモンツァでの悲劇という、F1の栄光と無常を体現した、まさに「思い出の」名車として語り継がれています。

フェラーリ最後のV12サウンドは、今でもあなたの記憶に響いていますか?